Hase's Note...


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「久しぶりなのに中身なし」

 あれよあれよという間に9月だ。最後の更新はいつだったのかとHPを覗いてみると、もう二ヶ月以上も「NOTE」の更新を休んでいたことがわかって、少し唖然としている。
 時の流れが速すぎる。まあ、これだけ締め切りを抱えていたらそれも当然か。正確ないいまわしではないのだが、体感的には「毎日が締め切り」という状態がもう半年も続いている。来月からはこれにもう一本連載が加わるのだ。我ながら無謀なことをしている。
 この「NOTE」の更新をもう少し頻繁にしてくれというメールや、もっと世の中に対して怒ってくれというメールが時たまくるのだが、そういう状況なので更新したくても怒りたくてもなにもできないというのが現状だ。どうでもいいことに怒るエネルギーがあるのなら、それを小説に費やしたい。一個の無駄もできない。そういう肉体的、精神的状態に今のわたしはある。機械的に「飲食日記」を書き続けるのができるぎりぎりのことなのだ。
 まあ、それでも最低、一ヶ月に一度は更新しなきゃなと思ってはいたのだがねえ。仕事に加えてマージの癌が堪えている。マージはもう元気なのだが、週に二日の病院通い本当にきつかった。元気を持て余しているワルテルと遊んでもやらなければならない。うーん、人生設計を誤ったな。そんな感じです。で、更新用になにか書こうと思ったのだが、書くべき事がなにも浮かばない。というわけで、マージとワルテルの写真をくっつけてお茶を濁すことにする。
marge&walter

 あ、そうだ。ずいぶん前のことだが、「馳さんの葉巻の保存の仕方、使っている用具のことなどを教えてください」というメールが来ていたな。とりあえず、わたしの葉巻の保存状況を写した画像もつけておく。
cigar

 一般的には葉巻は気温20度、湿度70%で保存しろといわれている。そのために最適なツールはヒュミドールだとも。が、葉巻を吸い始めると、ヒュミドールなんぞではとても追いつかないほどの量を買う羽目になる。なんとなれば、買いたての葉巻より、買って数年寝かせた葉巻の方がはるかに美味しいと気づくからだ。箱買いがはじまると、ヒュミドールでは足りなくなる。
 そこでわたしが目をつけたのがクーラーボックスだ。巨大なクーラーボックスをヒュミドールに見立て、海外のサイトで買ったプロピレングリコール溶液を浸したスポンジを中に入れる。プロピレングリコールというものと精製水を1対1の割合で混ぜ合わせると、相対湿度を70%に保ってくれる溶液になる。このプロピレングリコール、日本でも買えないことはないのだが手続きが煩雑で、それで海外から購入していたのだ。
 だが、ある時わたしははたと気づいた。20度、70%とはだれが決めたのか。葉巻文化発祥の地、ヨーロッパの人間であるに決まっている。彼らが高温多湿の日本のことなど考えていたわけがない。事実、東京の夏でどれだけ気を配ったとしても葉巻を保管している場所を20度、70%に保つことは巨額の金を投資しないかぎり無理なのだ。
 今ではわたしは湿度のことは無視している。無視するといってもそのまま放っておけば黴が生じ、腐り始めることは確実なので対策を講じてはある。これは葉巻の先輩(いっておくが、K方先生ではない)から聞いたやり方なのだが、アメリカから取り寄せた分厚く大きいジップロックの中に葉巻を箱ごと入れ、できるだけ空気を抜いて封をする。さらにもうひとつのジップロックで二重に来るんでエアコンを効かせた部屋の中に置く。こうすれば、葉巻が存在する空間の湿度は低く、しかし、葉巻自身が持つ水分が一気に蒸発することはない。徐々に徐々に、長い年月をかけて水分が失われていく。低湿だから黴が生えることも虫が孵化することもない。もちろん夏の間は部屋のエアコンはフル稼働で常に20度前後を保っている。
 葉巻が発酵する際に発生するガスが葉巻の風味を損なうから、定期的に空気を入れかえろと葉巻のガイドブックのようなものには書かれているが、この数年の経験で、葉巻の表面にはできるだけ外気を触れさせない方が香りが保てるのではないかと、わたしは考えるようになってきている。葉巻は吸臭性が強いのだ。外気が含む匂いを葉巻が吸収するよりは、そちらの方が葉巻本来の香りを楽しめるのではないか、と。
 おそらく、こうした保存の仕方をしている人間はほとんどいないと思う。が、日本で葉巻を吸う以上、これがベストなのではないか。ありあまる金があって、温度と湿度を完璧にコントロールできるウォークインヒュミドールを作るというのなら話は別だが。
 このやり方で葉巻を保存して味が悪くなったという人間が出てきても、おれの知ったことではない。そこのところ、勘違いしないように。
 付け加えておくと、わたしはインターネットを通じて取り引きのあるスイスの葉巻業者に自分が買った葉巻の管理を委託もしている。現在自分が所有している葉巻の大半は、スイスのふたつの業者の倉庫かどこかに眠っているのだ。これらの葉巻は10年後、20年後に取り寄せてじっくり味わうつもりでいる。 別に大口の取引をしているから特別に管理してもらっているというわけではない。メールのやり取りを頻繁に繰り返し、希望を伝え、やってくれないかといったら、向こうが「喜んで預かろう」といってくれたのだ。もうひとつは会員制だが、取り引きを初めてすぐに「会員になりたいのだが」とFAXを送ったらすぐ会員になれた。会費はゼロ。何事にも努力は必要である。
「喜んで」といってくれたスイス人の業者は、今では面識もないのにわたしのよき友人だ。2008年のスイスで行われるEUROでは、彼がボランティアでわたしをアテンドしてくれることになっている。

(2004年9月5日掲載)

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