「広がる差」
沖縄から戻ると、仕事仕事の毎日で、楽しみといえば、夜の食事(飲食日記読めばわかるでしょう)と酒、葉巻しかない。あとはテレビでのサッカー観戦か。
というわけで、夜な夜な葉巻をくゆらせながらいろんなサッカーの試合を見ているわけだが、先週から今週末にかけては、なかなか考えさせられるものがあった。
まずはチャンピオンズリーグ。PSVのパク・チソンとイ・ヨンピョ、レアル(マドリーではない、念のため)のイ・チョンスがチャンピオンズリーグの大舞台で溌剌とプレイしていた。チャンピオンズリーグの本戦でピッチに立った日本人がかつていただろうか。否。小野が辛うじて引っかかっているだけか(記憶が曖昧だ)。中田だとて、本戦のピッチに立ったことはない。ローマに残留していれば可能性はあったが、彼はパルマ移籍を選択した。
週末、そのパルマ対サンプドリアの試合では、試合内容そっちのけで、ベンチにいる中田と柳沢の話題がアナウンサーや解説者の口に上ることが多かった。日本人対決? 阿呆らしい。
我らが愚かなメディアが、セリエAでの日本人対決だ、小野のアシストだ、稲本の7試合連続先発だとろくでもないことに浮かれいている間に、韓国の若い選手たちはどんどんと檜舞台に立っていく。かたや、我らが期待の日本人選手はせいぜいがUEFA杯止まりだというのに、だ。
イ・チョンスは何歳だ? 21歳か? 22歳か? 中田がイタリアでセンセーショナルなデビューを果たしたのも、たしか21歳の時だ。今のアンダー22代表の中で、すぐにも欧州から声がかかる選手がいるのか? それも、チャンピオンズリーグを闘うようなチームからオファーが来る選手が、いるのか? その下の世代は? いねえべよ。全然いねえべよ。
ここでわたしは憂鬱になる。おれたちのライバルはマドリーではない。マンチェスターでもない。ユベントスでもない。韓国なのだ。中国なのだ。中東の国々なのだ。わけても韓国にだけは負けたくない。今の若い連中の気持ちは知らないが、三十代以上で、昔から日本代表を応援してきた人間は、韓国に負けることだけは我慢がならないはずだ。
韓国の若手選手たちは、日本人の遙か先を歩んでいる。なのに、日本のメディアはそのことに一言も触れない。サッカー協会も今現在の彼我の差をきっちりと認識しているとは思えない。向こうは審判買収してベスト4でしょ、こっちはまっとうに闘ってベスト16だよ。本気でそんなことを信じてるのだとしたら、お先真っ暗だ。現実を現実として受け止めない輩は、いずれ必ずしっぺ返しを食らう。
中田英寿に、冗談めかしながらも真剣に何度もいったことがあるのだ。「いずれ、チャンピオンズリーグで闘ってくれよ」と。今のままの中田では、その可能性は低いだろう。ヨーロッパにいる日本人の中で、チャンピオンズリーグ本戦で闘うチームからオファーが来る可能性があるのは、小野と稲本だけだと思っている。たった、ふたり。それも可能性でしかない。
2006年、2010年。このままでは、韓国との差は取り返しがつかないぐらいに開いてしまう。チャンピオンズリーグは欧州で行われる年間ワールドカップのようなものだ。そこでの経験は、必ず韓国代表にフィードバックされる。なのに、危機感を覚えているのはほんの一握りのサポーターだけだ。本当に鈍感な連中だぜ、日本人は。嫌になる。
というわけで、本稿のテーマ、次のスポニチのコラムに流用しよう。
(2003年10月07日掲載)
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