Hase's Note...


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「コンフェデ」

 パリで3泊、リヨンで4泊(サンテティエンヌは小さな街でホテルが少ないのさ)。パリはまだ過ごしやすかったが、リヨンは灼熱地獄。気温が39度を超えた日もあった。とんでもねえ。ヨーロッパには多いんだが、それだけ暑いというのに冷房は貧弱で、わたしが泊まっていたのはメリディアンという4つ星ホテルなのだが、午後3時を過ぎると強烈な西日が差し込んできて、カーテンを閉めて冷房を最大にしても暑くて暑くて、とめどなく汗が噴き出てくる。当然、仕事などできるはずもなく、あてどなく街をぶらついてはカフェでビールや冷えた白ワインを飲むということになる。辛かったなあ。まあ、リヨンは飯がうまいし、パリと違ってリヨンの人は人柄がいいので暑い以外に不愉快な目には遭わなかったが。
 そういう苦労を重ねながらフランスに滞在したというのに、日本代表と来たら……まあ、こんな酷暑の中で2日ごとに1試合なんてスケジュールを組むインチキ大会なんぞ鼻からどうでもいいんだが、それにしても情けない。苛々続きのニュージーランド戦、3得点といいつつ中身はお粗末で、最後の3点目だけがジーコの狙いのサイドからの攻略でかすかな希望は見えたもののなあ。大久保、がんばっちゃいるが、しょせんは小粒。あの体格じゃ、いまの百倍はうまくないと世界じゃ通用しまい。もしかして世界でも通用する日本で初めてのフォワードなんじゃないかとだれもが思っていた高原はコンディションが最悪。だいたい、動きすぎだぜ、このふたり。中央にボールが入っても、そこにいないんだもんな、フォワードが。だから、得点者はヒデか俊輔ってことになる。頭使ってくれよぉ。
 フランス戦はフランスがほどよくしょぼかったので見た目にはいい試合になったが、あそこで引き分けられないと、世界の強豪の仲間入りはできない。まあ、遠い道のりだ。あのPKは明らかにミスジャッジだが、そんなのは良くあることだし、あれだけしょぼいフランスを流れから崩せないのは日本がそれ以上にしょぼいという証拠以外の何ものでもない。
 ああ、そういえば、リヨンからサンテティエンヌは知人のフランス人が運転する車で行くはずが、リヨンのホテルのスタッフが「スタディアムなら地下鉄で行くのが一番便利で速いわよ」といった言葉を鵜呑みにして地下鉄に飛び乗り、教えられた駅がやはりというかなんというか、リヨンのスタディアムの駅で(地図を見て確認しろよ、おれ。それから日本人とフランス人が訊ねてるんだから、日本対フランスの試合だって把握しろよ、ホテルのスタッフ)、慌ててリヨンのパール・デュー駅に戻って電車に飛び乗り、試合開始に5分遅れ、帰りも最終列車が11時15分だからとて、試合終了5分前に席を立ち、なんとか電車には間に合ったものの、11時15分どころか12時近くになっても列車は動かず、それはなんとスタディアムからでれでれ戻ってくる日本人を優しいサンテティエンヌの駅員が待っていたからで、しかしそういう状況なんぞ知らないアホ日本人どもは相変わらずでれでれ歩いており、列車に乗りこんでも、きちんと時間を守って試合途中で泣く泣く抜け出してきた他のサポーターに謝るでもなく、良かったなあ電車があってとへらへら笑っており、おまえら全員死んでしまえとおれは思ったのだった。本当に死んでしまえよ。
 コロンビア戦は、本当はマドリーかサン・セバスチャンに飛んでエスパニョーラの試合を見たかった。それがかなわないのなら、ホテルの部屋に残ってテレビで観戦したかった。しかし、原稿を引き受けている手前、そういうわけにもいかず、タクシーをチャーターしてサンテティエンヌに向かったのよ。でもって、激怒。特に、後半のキックオフ開始直前に高原がへらへら笑っているのを見たときには、心臓が止まりそうなほどの怒りに襲われたな。闘う気がねえなら帰れ、ボケ。ファインダー越しに高原のへらへら笑顔を覗いていた日本人カメラマンたちは、例外なく殺意を覚えたそうだ。あんな猛暑で、あんな田舎町まで出かけていって、応援していたサポーターのことなんぞまるで頭にないんだろう。とんでもねえ。
 とんでもねえといえば、日本人サポーターも相変わらずとんでもなくて、あんなコロンビア相手にボールは支配すれどなんにもできず、不甲斐ない戦いを代表が続け、さらにさらに、くだらないミスからコロンビアに先制されて怒り心頭、あるいは勝利を願って祈りを捧げてでもいるべきときに、フランス人とコロンビア人がはじめたウェーブに参加してる始末。あんなもん、無視だろう、無視。コロンビア人どもにブーイングして中指のひとつでも立ててやるのが筋だろう。まともなトラップひとつできずにコロンビアのディフェンダーに転がされてばかりいる2トップに罵声を浴びせているのが筋だろう。観光気分なんだよな。ウルトラスじゃねえもんな。それでもやれやれだよ。死んでしまえ、だよ。
 ジーコがなにを考えているかはわからないが、それに彼がいつまで監督を続けているかはわからないが、やはり「自由」はだめだ。高原でも大久保でも、どちらかがこう動いたらもう片方はこうするという決め事がなければ、得点機は生まれない。どうして中央にいいクロスが入ったときに、2トップが両サイドでそのボールを眺めてるんだ? どうしてあのクロスをヘディングシュートするのがヒデなんだ? わけわからん。サイド攻撃はなんとか形が見えてきた。サントスがもう少しうまければとか、山田がもう少し積極的ならばとか、考えることは山ほどあるが、とりあえずサイドから崩すという形は見えてきた。あとは、サイドから崩した後に中央でどうするか、だ。決戦に挑む場に、コンディション不良で現れ、なおかつへらへら笑っているようなフォワードにしか頼れない日本の現状を考えると、やはり戦術は必要だ。
 稲本も酷かったなあ。自主トレなんかやってないんだろうなあ。ヒデがやってること、ヒデから聞いたことなんかを考えると、プロ意識が低すぎるとしかいいようがない。いいもの持っているのに、残念だ。アルゼンチン戦で酷評した俊輔は良し。自分勝手なプレイがかなり影を潜めていた。やりゃできるんだよ、やりゃ。
 それから、リヨンの最後の夜に出かけたレストランも良し。サービスも気分が良くて、メインに頼んだフォワグラが馬鹿うま。柔らかくてジューシーで噛んだ瞬間に口の中で溶けていく。フォワグラの下に敷かれたマッシュポテトとハムの混ぜものも相性抜群で、これまでに食べたフォワグラ料理の中でもベストかも。有名な3つ星レストラン、ポール・ボギューズには行かなかったが、充分に満足できた。
 イタ飯やスペイン料理は毎日食べてもオーケーだけれど、フランス料理を毎日食べたいとはやっぱり思わないやね。今回も、途中、中華やモロッコ料理で口直ししてしまいました。
 しかし、疲労困憊。明日からの仕事どうしよう。リヨンじゃ暑すぎて、予定の半分も仕事が進まなかった。やっぱ、行かなきゃ良かったんだよな。

(2003年6月26日掲載)

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