「運動不足」
疲れている。死にかけている。やはり、六泊八日、毎日移動してサッカーを五試合見るというあの地獄のような旅行がこたえている。
運動不足なのはわかっている。なにか運動をしなければとは思っているのだが、まわりにいる人間はゴルフを勧める。ゴルフはいやだ。やりたくない。なんとなれば、大沢在昌がいる。彼はわたしから金をむしり取りたがっている。最近の若手作家にはゴルフをする人間が少ないので、小金を他人からむしり取る喜びを味わえないのだ。それで、わたしを狙っている。
大沢在昌にカモられるのだけはいやだ。癪に障る。
こんなことを書くから、馳は生意気だといわれる。かまわんのだ。生意気をゆるしてくれる人にしか生意気な態度はとらんのだから。
サッカーをやろうにも、もう、身体がついていかない。5、6年前までは草サッカーをやっていた。が、あるとき、なにが悲しゅうてか、大学生主体のチームと試合をすることになった。一八〇センチ、八〇キロはありますという若造とボールを競り合って撥ねとばされた。肋骨にひびが入った。ちょうど、忙しくなる時期と一致していたこともあって、プロとして趣味のサッカーで怪我をして本職に支障をきたすようでは失格だろうと思い、サッカーをやめた。
やめないで続けてればなぁ、といっても後の祭だ。とにかく、いまサッカーをやりたいと思っても、体力作りを先にしなければならない。でも、わたしはジムは嫌いなのだ。偏見だけど。かといって、自分でランニングしたり筋トレするのもなぁ。
昔はやっていたこともあったのだ。弱小出版社に勤めていたころだ。金がなかったので、毎日酒しか飲まず、それで身体を壊しかけて病院に行ったら、「若いから飲むなとは言わんけれども、蛋白質をもっと取りなさい。君の肝臓は栄養が足りなくて悲鳴をあげている」といわれた。それで、冷や奴だのチーズだの納豆だのの安いつまみを食べるようになったのだが、ついでだからといって(なにがついでだからなのか、今でもよくわからないのだが)、一日おきに、五キロのランニング、腕立て、腹筋、スクワット、その他諸々の筋トレを近所の公園でやった。身体を壊す直前までの体重は58キロだったが、一年後の体重は65キロ。今と違って、体重が増えた分はすべて筋肉だ。会社の先輩に「おまえ、気がつかないうちにプロレスラーみたいな身体になってるな」といわれたものだ。
だが、それもフリーになって、夜、時間が自由に作れなくなるのと同時にやめてしまった。昼休みの時間帯にジョギングをしている人をよく見かけるが、わたし、人前にひとりで頑張っているところを晒すのが大嫌いなのだ。困った性格だと自分でも思う。筋トレをやめたかわりに草サッカーをはじめたのではあるが、とにもかくにも今現在、7キロ分の筋肉はすべて、脂肪に変わってしまった……ああ。
話はころりと変わるが、少し前にある人からワールドカップの、イングランド対アルゼンチン戦のチケットがネットで高額で取引されていると聞いた。
スポニチのコラムにも書いたのだが、阿呆だぞ、それ。イングランド対アルゼンチンは、どちらかというと退屈な試合になる可能性が高い。もちろん、手に汗握る好ゲームになる可能性もあるが、ん十万も使う価値はない。W杯がおもしろいのは、決勝トーナメントに入ってからだ。サッカー好きはわかってるんだろうが、素人は浮かれすぎないことだ。ん十万もの資金があるんなら、韓国に行って観戦した方がよっぽど楽しいはずだぞ。物価安いし、食い物うまいし、人は優しいし。こちらが日本人でも、礼節を持って接すれば、必ず笑顔で迎えてくれる。日本人とは大違いだ。わたしはワールドカップの予選リーグ期間中は、日本代表の試合を除いて、すべて、韓国で見ようと思っている。サッカーライターの杉山茂樹さんの話じゃ、スタジアムも韓国の方がよっぽど素晴らしいらしい。
というわけで、年内の更新はお休みさせてもらう。それから、どういうわけか、欧州で写したはずの写真がパソコンに取り込めないので、知人が撮ってくれた写真を掲載する。川口能活とわたし、知人が写っている。サングラスをしてないのは、酔っぱらっていて隙を見せてしまったせいだ。ま、たまにはいいだろう。
よいお年を。
(2001年12月20日掲載)
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