「コンフェデ杯」
いや、驚いた。グループB、一位通過。いったい、こんな素晴らしい結果をだれが予測していたというのか。状況分析を顧みないただ熱烈だというだけのサポーターか。サッカー関係者ですら、「できれば予選グループを突破してもらいたい」と思っていたにすぎないはずだ。
なにしろ、いつもの「嫌な感じ」で試合を見ていたのは、グループBの中で一番弱いと目されていた(実際、弱かったわけだが)カナダとの試合の前半だけなのだから、驚きは倍加する。カナダ戦、能活のスーパーセーヴがなければ、相手に先取点を取られていたら、状況は百八十度違ったものになっていたのだろうが、しかし、素直に嬉しい。「スポニチ」のコラムや「ナンバー」にエッセイを書く時は、いつだって辛口になってしまうが、それはわたしに求められているのがそういう「キャラ」だからであって、わたしも日本代表の一サポーターだ。懸念されることは多々あったとしても、日本代表が勝つことは嬉しいのだ。たとえ、カメルーンやブラジルが予想を大きく下まわってできの悪いチームだったとしても。
それにしても、トルシエは強運だ。化けの皮が剥がれかけている時に、絶好のコンディションの選手たちを抱えて、コンディションの悪いチームと闘い、勝つ。彼は二流の監督だが、強運であるというそれだけで、一流監督のふりをすることができる。日本のマスコミが四流だからという現実もあるが、強運なのは悪いことではない。
マスコミだけではないな。日本サッカー協会が五流の人間たちに牛耳られているという現実もある。カナダ戦だかカメルーン戦だかの後で、ある協会幹部のコメントがスポーツ紙に載っていた。
「これでトルシエがどうのこうのという声もなくなるでしょう」
苦笑。おっさん、ほんとにサッカーわかってるのかいな、と突っ込みをいれたくなる。どんなに素晴らしい監督でも、すべてのサポーターやメディアが完全に彼を支持することは、まず、ない。あのヨハン・クライフですらバルセロナのサポーターの石もて追われるようにチームから放り出されたのだ。もっとも、バルセロナのサポーターは自らの過ちを悔いて、クライフにバルセロナの監督に戻ってくれるようにと懇願しているが。クライフでそうなら、二流監督のトルシエの進退を問う人間がいなくなるはずもない。世界には、彼より能力のある監督がごろごろしているのだから。
サッカー協会の幹部は、本当にサッカーがわかっていないのだ。スカパーで連夜、欧州のサッカー番組を担当しているアナウンサーたちの方がよっぽど勉強しているし、わかっている。
あなたたちは知っているだろうか? サッカー協会の幹部は、海外に視察、出張に行く時はビジネスクラスの航空チケットを使う。
あなたたちは知っているだろうか? サッカー協会は「登録費」という名目で、日本中のサッカー少年から金を徴収している。そんな馬鹿げたことをしているのは、世界広しといえども、おそらく日本だけだ。これは、昔、サッカーが日本でマイナースポーツだったころの名残りなのだが、こうしたちゃちな利権を、彼らは手放そうとしない。今現在、サッカー協会には二十億近い金が余っているというのに。
あなたたちは知っているだろうか? 日本サッカー協会理事という肩書きがあると、全国各地から講演の依頼が来るそうだ。講演料は一回、百万円前後らしい。この金は、すべてではないのかもしれないが、講演を依頼された理事の懐に入る。理事の肩書きがなくなれば、当然、講演の依頼も来ない。
あなたたちは知っているだろうか。日本代表の壮行会があると、参加者への手土産として、現サッカー協会会長の関連製菓会社の菓子の詰め合わせが配られるらしい、ということを。もちろん、その代金はサッカー協会から製菓会社へ支払われる。
スポーツの美徳の名のもとに行われる、ちゃちな利権の食い合い、ちゃちな権力闘争。いやになってしまう。他の国のサッカー協会も似たりよったりなのだろうが、こちとら、一年後にW杯を控えているのだ。
それはそれとして、小野は素晴らしかったな。彼があそこまで戻っているなら、ヒデはこの大会に来なくてもよかった。
7日の夕方は、横浜に行く。声を枯らして代表を応援する。なんとしてでも、決勝に進出して、フランスと再戦してもらいたい。この大会で彼らが示した技術と自信が本物かどうかが、フランス戦で試されると思うから。
(2001年06月06日掲載)
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