「アルゼンチン戦雑感」
0−2というスコアは、まあ、スコアだけ見れば順当というところか。準本気モードのアルゼンチン相手に、中田、稲本、小野を欠いた戦力で2失点で済んだのだとすれば、やはり、順当だろう。スコアだけ見れば。
が、試合観戦して、前半の日本代表の頑張りを見ていたならば、やはり後半早々の2失点は悔やまれる。なにぼけらっとしてるんだかなあ。前半を0−0で折り返して、「おれらもやれるんじゃねえか」などというくだらない慢心をしおってからに。アルゼンチンクラスのチームになれば、苦戦してるように見えたって、点を取るべき時をきっちり把握して嵩にかかって攻めたててくるというのは常識なのだが、日本の選手および山本監督代行にはその常識が備わっていなかったということか。やれやれ。フランスW杯でも同じようにやられているというのに、名良橋と中西と秋田はなにをしておったのか。本当に前半はジャマイカ戦の反省からディフェンスラインと中盤の間のスペースをうまく消して上々に戦っていたのというのに。まあ、それでもディフェンスの4人は頑張ってたけれどね。秋田なんて、失点時以外は、ほとんどアルゼンチンのFW陣、止めてたもんなあ。ちなみにわたしは秋田に敬意を表して、個人的に「秋田先輩」と呼んでいる(面識はないが)。「中山は中山先輩じゃないの?」と連れ合いに訊かれたが、中山は中山先輩ではないのだ。先輩と呼びたいのは秋田だけだ。中山も秋田もわたしより年下ではあるが。
慢心した、という部分では、やはり中田や小野がいなかったのが響いたと思う。連中は気を緩めることの怖さを嫌というほど知っている。鈴木はあまり試合に出ていないし、俊輔はそれどころじゃないチームにいる。修羅場をくぐった数だけでも、中田はやはり日本代表の支柱だ。
しかし、失点以上に、得点の気配がほとんど感じられなかったことの方が問題か。俊輔は相変わらず独りよがりのプレイ、というか、レッジーナのFWより高原の方がよっぽどましなんだからもっとシンプルにボールをさばけばいいのに。レッジーナ癖がつくのはいいことだとは思えない。わたしが取っているスポーツ新聞は俊輔に6点の評価を与えていたが、甘すぎるなあ。サッカーがわかってないなあ。わたしなら5点だ。あの試合で6点あげていいのは秋田先輩だけだろう。失点を1で抑えていたら7点あげてもいい。高原はやっぱり点を取れなかったから5・5というところか。
小笠原も期待外れだった。なんだ、ありゃ? 中田や小野がいないときは自分の最高のチャンスなのだということを理解しているのだろうか? あの小笠原を使うぐらいなら、三都主をスタメンで使ってほしかった。三都主のドリブル突破は8割方止められていたけれど、2割の確率でも、突破できたときはビッグチャンスが生まれる。でもなあ、ジーコの目から見れば、三都主は「へたれなブラジル人」なのだろうなあ。しょうがない。ブラジル人はいつだってブラジル人を見る目が厳しい。三都主が日本生まれの日本人なら、ジーコだってあのドリブルを認めると思うのだが。
ジーコは4−4−2を基本システムにするつもりなのだろうが、わたしは4−2−3−1を夢見る。日本のFWを二人並べたって意味がない。だったら、世界に誇れる中盤の選手を多く投入した方がいい。高原の1トップ、それに俊輔や三都主や中田が絡んだ方がチャンスは多く生まれるはずだ。
試合が終了した後でも、それほど落胆はしなかったが、試合中、わたしは終始苛立っていた。日本代表のパフォーマンスに、ではない。テレビ朝日の中継に、だ。
アナウンサーは平気で選手の名前を間違う。ボールはタッチラインを割っただけなのに「日本のコーナーキックです」と絶叫する。松木安太郎は相変わらず素人みたいなことを話すし。セルジオにもっと喋らせろよ。でもまあ、セルジオに暴走されると困るか。セルジオのおっさんも、テレビで解説するときは十分に自分を抑えているはずだが。ピッチサイドにいる堀池のコメントも邪魔なだけ。いったいどこのだれが放送席だけじゃなく、ピッチに元選手のコメンタリーを立たせるなんて余計なことを考えたのだろう。そんな中継するのは日本だけじゃないだろうか。
余計なものが多すぎる。それに加えて、中継カメラがでたらめ。オフサイドの微妙な判定があっても、そのシーンをリプレイしない。ベロンと日本の選手が険悪な雰囲気になってるのに別なところを映す。勘弁してくれよ、もう。こちとら、サッカー中継はスカパー!で見ているのだ。スカパー!の中継はヨーロッパのプロが撮っているのだ。おれはプロのカメラに慣らされているのだぞ。大方の日本人だって、ワールドカップの時は、FIFAから認められた国際映像のプロが撮った映像を見ていたのだ。オフサイドの判定では執拗にそのシーンを繰り返し、どつきあいがあればすぐにカメラがパンする。サポーターはそういう映像に常に触れているのに、日本のテレビ局の連中は、なにもわかっちゃいない。
アナウンサーを含めて、日本の地上波テレビはありとあらゆる質が低下しているが、どこかにプロはおらんのだろうか。おらんのだろうなあ。視聴率がすべてだもんなあ。どんなにお粗末な中継でも、日本代表の試合ならそこそこ視聴率が取れて、反省する必要ないもんなあ。ジャーナリズムのジャの字も必要ないもんなあ。でもってそうしたテレビ中継を見る頭の悪い連中はサッカーってそういうもんだと思いこんでしまう。やだやだ。
倉敷保雄さんのアナウンスで日本代表の試合を見たいなあ。
まあしかし、アルゼンチンとの試合は日本代表に取っては最高の強化試合だった。キリンカップやコンフェデ杯でやる気のないチームとたらたら試合するよりは、こうした「本気の強豪」と試合を繰り返した方がなんぼかましだ。たとえ、勝てなくても。手も足も出なくても。
十二月に、うじきつよしさんとBSのテレビで対談だかなんだかをすることになった。その時に、もう一回アルゼンチン戦の話を濃くしてみようと思う。
(2002年11月23日掲載)
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