Hase's Note...


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「興行」

 いやいやいやいや、ずいぶんと更新をさぼってしまった。すまぬ。年末は嫌になるほど忙しい、ということでご勘弁を。
 仕事で忙しいとほざきつつ、十一月と十二月は、久々に格闘技の興行を二本、見に行ってしまった。
 一つはパンクラスの横浜文化体育館で行われた大会。パンクラスはしばらく見ていなかったのだが、『マンゴー・レイン』の横浜でのサイン会に、パンクラスの選手である渋谷修身君が来てくれて、それが縁で飯を食い、ついでといっちゃ失礼だが、試合を見に行くことになったのだ。
 もう一つは、K−1。こっちもまた興味を失って数年経つ。が、大のプロレスファン(だった)某社編集者が「馳さん、ボブ・サップ見に行きません? ボブ・サップ、昔のプロレスラーの匂いぷんぷん醸し出してるでしょう」ということで、行くことになったわけだ。
 パンクラスの方は、渋谷君は負けるし、メインイベントの鈴木みのる対ライガーはあっという間に片がつくし、で退屈だった。だいたい、総合格闘技で勝つための練習に何年も真剣に取り組んでる選手に、プロレスラーが勝負を挑むということ自体が失礼でとんでもないことだとわたしなぞは思うのだがなあ。いきなり浴びせ蹴りに行ってかわされてマウント取られてぼこぼこに殴られて、挙げ句腕ひしぎ出ギブアップ。なにしに来たんだ、ライガー? あんなんで勝って嬉しいか、鈴木。
 総合だ、真剣勝負だといっても、パンクラスも興行団体。客を呼ぶためにはプロレス的な仕掛けやマッチメイクが必要なのだ。だったら、プロレスやってりゃいい。
 K−1も酷かった。ボブ・サップはいいや。存在だけで凄いから。だけど、アーネスト・ホーストは可哀想だ。ぜんぜんパンチ当たってないのにレフェリー・ストップ。怒るわな、あれじゃ。ホーストが優勝したのを棚ぼただなんていう連中がいるが、わたしにいわせりゃ、ホーストの優勝は当たり前。だって、勝ち上がった選手の中で、ホーストだけがほとんどノーダメージなんだもん。ボブ・サップのパンチ、当たってないんだもの。なのになぜサップ勝たせたかっていやあ、意地悪な元プロレスファンにいわせれば、興行のためでしょう。サップが勝たなきゃ話にならんかったわけでしょう。でサップに勝たせたのに、そのサップが負傷欠場じゃ、おまえらなにやってんのよ。これがプロレスだったら、なにがどうあったってサップに試合させてるわな。なにが真剣勝負だよ。
 試合会場にいた人は覚えてるだろうが、あの興行、休憩時間が都合二回、トータルで一時間以上もあった。場内のアナウンスは「二十分の休憩」だったけれど、二回目の休憩は小一時間は続いた。なんでかっていえば、テレビのせいだろう。テレビ放映の九時前に優勝者が決まれば、ネットでその情報が流れて視聴率が下がる、それじゃ都合が悪いから、K−1さん、時間調整お願いね、とテレビ局に釘を刺されていたに決まっておるのだ。そういう裏は、おれ、全部知っておるのだ。なにせ、筋金入りのプロレスファンだったからな。いつもテレビ放映終了直前に猪木が劇的な勝利を収めるのに熱中してた口だからな。
 そこまで恥知らずにしておいて、なにが真剣かよ。要は興行だろうが。客入ってなんぼの見世物だろうが。偉そうな顔してんじゃねえよ。
 というのが、ここ数年の「総合格闘技」なり「真剣勝負」なりへのわたしのスタンスだ。真剣勝負がつまんなくって客が入らなくなったから、プロレスをやりはじめたのだ、世の中は。その逆行ってどうする。別に、総合格闘技をやってる人間を馬鹿にするつもりはないが、それで金儲けをしようという輩は死んでしまえと思う。あんなもの、人様に見せて金を取るものでは、絶対にない。結局、パンクラスでも修斗でもプライドでもなんでも、人気があるのは技術の善し悪しじゃなくって、鈴木みのるだったりルミナだったり、要するにプロレスラー的「華」のある選手ばかりで、観客だってわかりやすいものを求めているってことだろう。ボブ・サップ人気も突き詰めりゃそこに行く。
 わたしにとって、唯一見る価値のある真剣勝負は極真の大会だな。あとは中量級のキックボクシングか。前者はいまだにアナクロな「魂」が大会のすべてを牛耳っているのが心地よいし(裏じゃきな臭い話がごろごろ転がってるが)、後者のスピードは圧巻だ。
 渋谷修身君はいいやつで、だからわたしはパンクラスの会場には足を運ぶだろう。が、K−1は金輪際行かない。プライドも行かない。冗談じゃねえや。あんなものに、おれの貴重な時間を費やせるか。
 K−1グランプリが終了した直後、わたしは同行した編集者にこう行った。
「Yさん、次はさ、ボブ・サップがプロレスやるとき見に行こうよ。K−1なんて冗談じゃねえよ、詐欺じゃんこれ。プロレスだよ、プロレスしかねえよ」
 とかいいつつ、わたしは日本のプロレスもほとんど見なくなってはいるのだが。もちろん、御年五十ン歳のY編集者も日本のプロレスを見なくなって久しい。WWEだけが我々の心のオアシスなのだが、連中もマンネリに陥っている。どないしたもんだろうかなあ。
 ああ、でも、とある情報によれば来年のWWE日本ツアーで、あのストーンコールドが復帰するらしい。それだけを楽しみに、生きていこうかのう。
 そういえば石井館長、脱税のしかたもアントニオ猪木に学んでおけばよかったのになあ。

 というわけで、良いお年を。良い年が来るわけないんだが。

(2002年12月28日掲載)

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